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モロゾフウォッカのこと [ウォッカ談義]

私は日本ではなじみの少ない本場ロシアのウォッカをほそぼそながら一生懸命もう20年近くも輸入しています。小さい会社なので華やかな宣伝活動もできないのですが、たった一度だけ7年ほど前に会社設立15周年記念として青山のロシア料理店テアトロスンガリー青山(その後閉店、今はありませんが)で自社主催の「ウォッカ展示試飲会」を開催したことがあります。自社他社が輸入したロシアウォッカはもちろん全て、さらにまだ日本に輸入されたことのないロシアウォッカも過去に輸入されて終売になったウォッカもたくさん並べて自由に試飲していただきました。

 その時ご参加くださった洋酒ライター石倉一雄氏15周年祝いも兼ねてと変わったボトルのウォッカを1本展示試飲用に寄贈してくださいました。名前は「モロゾフウォッカ」。ボトルのカーブ形状もおもしろいけれど栓の上に真鍮の注ぎ口がついているのが目立ちます。しかしそれは注ぎ口としては役にたたず、ただ栓の上にかぶせてあるというか軽くおいてある飾りなのです。MorozoffVodkaBottle.jpgMorozoffVodkaCap.jpg(写真)

 その日の展示会終了後、私は底の方に5-6センチほどウォッカが残ったそのボトルを自社に持ち帰り「プロムテック・ビズ ウォッカコレクション」(といっても事務所の戸棚に収まる程度の旧ソ連地域のウォッカたちのことですが、-写真)に加えました。vodkacollection.jpg

 この変わった真鍮の栓カバーはいったいなんだろうと思いつつ、今もそこに置いたままにしてあります。

 

 先日、ようやく時間みつけて久しぶりに本屋に行き「酒読み」(社会評論社 ほろよいブックス 文学と歴史で読むお酒)を買いました。 20人あまりの執筆者が主に歳月を重ねた酒の話題を書いておられます。「現代(いま)につがれるその一杯 戦後の酒と人」の章に石倉一雄氏の「グラスに映った残像から」というエッセーがありました。

 そのページを開くとタイトルの下になにやら見覚えのあるあのボトルのシルエット!

 エッ?と思って読み進むとなんと7年前にいただいたモロゾフウォッカと石倉氏が出会ったいきさつが詳しく書いてありました。ただ、その出会いからどのようにして石倉氏がその1本を入手するにいたったかは書いてありませんが、ともかくそんな希少価値のあるものを私がいただいてしまったのだ・・・とあらためて深く感謝。

 石倉氏も当初あの真鍮のギリシャの水差し風飾りの意味がわからなかったけれど、今、昭和40年ごろ洋酒愛好家が自宅のインテリアとして購入したホームバーセットブームに注目するに至ってようやく合点がいったそうです。

 当時売り出された「モロゾフデラックスホームバーセット」の写真の中であのギリシャ風水差し飾りは見事に栄えていい雰囲気をつくっていました。きっとそのセットを買った人は会社の同僚や部下を自宅に招いた時、それを見てもらいながら「ねえ、何にする?」と得意げにドリンクを選ばせることに無上の喜びを感じていたのだろう、と私も思います。

 

 私はあらためて7年以上自社戸棚に放置してあったそのウォッカを取り出してよくよく観察しました。

 「モロゾフウォッカ」という名称からどうしてもロシア産のウォッカをイメージしてしまう方も多いでしょう。私もそう思っていました。

ところがこれは数少ない日本の国産ウォッカのひとつなのです。

ラベルには次のように書いてあります               MorozoffVodkaLabel.jpg

           MOROZOFF VODKA

              モロゾフウォッカ

              スピリッツ  700ml 60%

              山梨県石和市郡 モロゾフ酒造株式会社

 

 ちなみにこのモロゾフ酒造株式会社というのは、現在のモンデ酒造株式会社さん(以下敬称略)の前身です。

この会社は昭和27年に東邦酒造株式会社という社名で創立、昭和35年にモロゾフ酒造株式会社に改称、さらに昭和42年にモンデ酒造株式会社に改称して現在に至っています。創業以来山梨県石和にあり、今は山梨産ブドウでつくるワインが主要製品ですが、創業のころは支那酒(中国酒)、ウォッカも造っていました。モロゾフウォッカは同社が東邦酒造時代に製造発売開始したウォッカの商品名で、その後同社はこの商品と同じ名前モロゾフ酒造に社名変更したようです。私が石倉氏からいただいて持っているモロゾフウォッカにはモロゾフ酒造株式会社と明記してありますから昭和35年から昭和42年の7年間に製造発売されたものに違いありません。

 

 私はそのモロゾフウォッカのボトルを布巾で丁寧にみがいて、ギリシャの水差しもまた栓の上にかぶせて、再び我が「ウォッカコレクション」の棚にもどしました。そこに並ぶ現代のロシアウォッカの中でモロゾフウォッカは独特のレトロな雰囲気で異彩を放って鎮座しています。

 

 私は急にモロゾフという名前に興味をもち、自宅で主人の蔵書から「大正15年の聖バレンタイン-日本でチョコレートをつくったV.F.モロゾフ物語」(川又一英著PHP研究所)をひっぱりだしてもらって読みました。そして、神戸の有名な洋菓子メーカー「モロゾフ株式会社」も山梨の「モロゾフ酒造株式会社」も、日本人が設立した会社であること、両社は社名が同じだけでまったく関係ない会社であることを知りました。しかし、その両社のかげに、ロシア革命時に亡命して日本に定住した白系ロシア人モロゾフ家の人々の活躍と存在、この「モロゾフ」という名前自体が大きくかかわりがあったことも知りました。この亡命ロシア人家族の波乱に富んだ苦難の人生、にもかかわらず誠実な正直な生き方を貫いたことに非常に感動しました。モロゾフ一家は有名な「モロゾフ」とは別に神戸に自分の洋菓子メーカーを設立し「コスモポリタン洋菓子店」として高品質のチョコレートキャンディなどをつくって人気を博したいきさつも詳しく書かれています。

ちなみに、インターネットで調べたその後の情報によると「コスモポリタン洋菓子店」は平成18年三代目V.モロゾフが時代の流れにマッチしなくなったと廃業を決意したそうで残念ながら今はありません。

                                    ヴォードチカ店長

 
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